2003年12月2日(火) 『あかちゃんは?』
いや〜な気分で病院に着くと、
          院長「(;`O´)oどうしてもっと早く来なかった!」
          と、いつもはやさしい院長にえらい剣幕で怒鳴られた。
          その後、いつもどおりのエコー検査。
          
          ・・・いるはずの赤ちゃんの姿が・・・
          どうしても見つからない・・。
          
          その代わりなのかブツブツした物が画面いっぱいに映し出されていた。
          その映像を見せられてこぶボーゼン。
          
          院長「今回はお子さんをあきらめてください。『胞状奇胎』です。ぶどうっ子って聞いたことはありますか・・・( -_-)┌」
          
          こぶの頭はもうすでにパニック。
          検査のために開いていた足がガタガタ震えた。
          
          内診台を降りて下着を履こうとするんだけど足の震えがじゃましてなかなか履けない。
          
          看護師さんに「(  ̄_ ̄)σ大丈夫?手伝おうか?」
          と声を掛けられた。
          
          すぐに待合室にいたしゅうちゃんが呼ばれ、2人で話を聞いた。
          
           院長「( -_-)┌明日にでも処置します。
          すぐに入院してください。」
          
          ・・・そう言われても「はい、わかりました。」とは言えない。
          
          『(;´д`)聞いたこともない病名。一体何がどうなってしまったの?。
          ・・・どうして私が。
          煙草も吸わないし、お酒も飲まない。
          体に悪いことなんかした覚えもないのに。』
          
          (煙草を吸うからとかお酒を飲むから胞状奇胎になるというものではないけど、パニックになったこぶが考えたことなのでおこらないでね。)
          
          呆然と涙を流すだけのこぶに
          
          院長「( -_-)┌350人くらいに1人の確率で発症します。
          原因は今のところ不明ですが、染色体異常も考えられます。
          2回掻爬(そうは)すれば再発の可能性は低くなります。」
          
          胞状奇胎になった人では、「皇后美智子様が皇太子様の次のお子さんを胞状奇胎で流産している。」とも院長が教えてくれた。
          そして、院長「( -_-)┌掻爬すれば100%次のお子さんが望めます。まれに絨毛癌になる人もいますが、薬で完治できるから心配しなくてもいいですよ。」
          
          こぶは、『滅多にならない胞状奇胎になったので、稀になるという絨毛癌にもなるのではないか』と勘ぐっていた。
          
          いつもは前向きなこぶもさすがにネガティブになっていた。
          
          院長「( -_-)┌胞状奇胎は、赤ちゃんの50倍のスピードで分裂します。
          ですから早く処置をしなければならないので、明日全身麻酔で掻爬しましょう。」
          
          こぶはやっとの思いで「少し考えさせてください。」と返答した。
          でも、もうすでに考える余地は残っていない事は分かっていた。
          
           診察も終わり、こぶは泣きながらも自分に
          『落ち着け、落ち着け』と言い聞かせ、これからしなくてはならないことや、しゅうちゃんに頼むことを相談しながら家に帰った。
          
           まず、しゅうちゃんの両親にはなんて言おう。
           出産する予定だった病院もキャンセルだ。
           しゅうちゃんの両親にはしゅうちゃんから話してもらうことにして、親戚や義妹への説明は両親にお願いしよう。
          
           不幸中の幸いと言うべきだろうか。
          こぶは、自分の両親や兄姉に妊娠した事を告げていなかった。来年の年賀状で報告しようと思っていたからだ。(理由は、いやな予感がしたのと、病気の母に心配をかけたくなかったから。)
          
           色々としゅうちゃんと話し合って、帰り道に安産の神様のいる神社に立ち寄った。(これから出産するわけじゃないんだけどね)
          
          『m(;T_T)m明日の手術がうまくいきますよう╋(・o・*)アーメン。
          それとこぶの赤ちゃん、生んであげられなくてごめんね。
          ママが元気になったら今度こそあなたを生むからね。』
          と神様にお祈りして帰途に着いた。
          
           しゅうちゃんの顔がまともに見られない。
          申し訳なくてね。きっと彼も泣きたい気持ちだと思う。
          でも、こぶが泣いてるし、落ち込んでいるし、これからやらなければならない事があるから気丈に振舞っているのが見ていて分かる。
          それだけに顔をまともに見られない。
          
          『辛い事を頼んで本当にごめんね。m(;T_T)m』
          
           入院の準備をして、午後6時過ぎに入院した。
          外はもう真っ暗だった。
          
           病院に着くとすぐに、明日の処置の準備として子宮口を広げる葉巻みたいな薬草を詰めた。
          これが痛い。(病院によっては、子宮口を広げる薬を使うところもある。)
          
          無理やり入れようとするから痛くてお腹に力が入って足がはね上がる。
          看護師さんがこぶをおさえつけて、「ヒッヒッフーよ!」
          
          『そんな!いきなりラマーズ法をやれと言われても無理でしょ!
          練習してないもん。
          そもそもソフロロジー法で生むつもりだったし、
          ラマーズ法なんて知るか!』とは思っていても、とりあえずヒッヒッフーを看護師さんのマネをしてやってみた。
          
          これが、なかなか効果があって無事薬草を入れる事ができた。
          
          こぶ「(;´д`)痛かった。」
          院長「よく我慢したね。でも、出産の時はもっと痛いんだからね。」と言われた。
          立ち上がって歩くと薬草が出てきてしまうので、車椅子で病室に移動。
          つわりがあるので気分が悪いし、どうしてこうなってしまったのか納得できなくて涙が止まらず、精神安定剤の注射を打ってもらった。
          しゅうちゃんは消灯時間になるまでそばにいてくれた。
           
           明日の手術が怖い。
          無事に終わりますようにと神様にお祈りをした。
          
           夜中にトイレに行きたくなって、ナースコールをしたら、看護師さんが”おまる”を持ってきてこぶのお尻の下においた。
          看護師さんが「また、したくなったら呼んでね。」と言って病室を出て行った。
          
           眠れなくて夜中の2時過ぎまで起きていた。
          看護師さんが病室に入ってきて「こぶさん。眠れないの?」と声を掛けてきてくれた。
          看護師さんと話をしていたら気持ちが楽になってきて3時頃ようやく眠る事が出来た。
          
          話を聞いてくれてありがとうです。
2003年12月3日(水) 『ばいばい あかちゃん』
 しゅうちゃんが朝7時頃病室に来てくれた。
          こぶは手術が怖くて看護師さんに呼ばれるまでしゅうちゃんの手を握っていた。
          
           9時頃「こぶさん、そろそろ行きますよ。」と看護師さんに声を掛けられ手術室に車椅子で移動した。
          
          9:30から1回目の掻爬手術をする。
          手術室に入ると、看護師さんが2人いて、昔のドラマに出てくるような古い処置台に仰向けになって乗るように言われた。
          言われたとおりにすると、両足を革のベルトで固定された。
          動かないようにと両腕も同じように皮のベルトで固定された。
          その光景があまりにも怖くて麻酔をしてから吐いてしまった。
          
          「心配しないで。すぐに終わるから。」と若い看護師さんがこぶの手を握ってくれた。
          
          全身麻酔をしてから30分くらいで終了。
          終わってから看護師さんに声をかけられ返事をする。
          頭がもうろうとしていて気持ちが悪い。
          話すことはできないが、看護師さんの声ははっきり聞こえる。
          
処置が終わり、隣の回復室へこぶを移すときの事。
          「あら、この子意外に重たい。これじゃ無理ね。誰か手の空いてる人を連れてきて。」
          連れてこられた看護師が
          「あら本当に重たいのね。背も高いし大変。」
確かに背も高いし体重もそれなりにはある。
          でも、そんなに驚くほど重くはないはず。と何度言おうかと思った。
          看護師さん達は色々ブツブツ言いながら、私を4人がかりで移動させた。
          
          『全く失礼な!聞こえてるんだぞ。』
          
           3時間くらい回復室のベッドで寝た。
          子宮を収縮させるために、お腹に大きなアイスノンを載せられて身動きもできない。
          この間に何度も吐いた。
          ここでも看護師さんの話し声が気になる。
          
出血しているからナプキンをしているんだけど、自分では取り替えることができないのでやってもらったときの事。
 こぶのパンツをあげる時に「このパンツちょっと小さいんじゃない?おへそまで来ないじゃない。これLサイズ?」ってパンツをグイグイ引っ張りあげていた。
          
          『Lサイズだけど!余計なお世話だ!(;`O´)o
          そんな事を言われる筋合いはない。
          まったくもってここの看護師は失礼な人が多いな。』
          
           麻酔が覚めてきた頃に頭が痛くなってきた。
          しゅうちゃんが冷えピタを買って来てくれたので頭に貼る。
 13:00に歩いて病室に戻る。
          しゅうちゃんの両親が遠い所(約300q離れてる)から来てくれていた。
          
          『昨日の夜、しゅうちゃんから電話で今日の事を聞いて、いてもたってもいられなかった』と、心配して駆けつけてくれた。
          
 しゅうちゃんパパが梅干とかこぶが食べられそうなもの物をもって来てくれた。
申し訳なくて涙が止まらない。
          
          こぶの背中をさすってくれて黙って話を聞いてくれたしゅうちゃんママ。本当にありがとうございました。
          
今は赤ちゃんのカレンダー(←大塚製薬のやつ)を見るのもつらいので、カレンダーをひっくり返しておく。
 今回の処置で胞状奇胎を96%とることができたそうだ。出血がひどくクラクラする。
          嘔吐ばかりしていて食事が摂れない。
          抗生物質・子宮収縮剤・鉄剤を飲む。 
2003年12月4日(木) 『科学がますます身近になる本』

この本のこと
 個室に移った。
          まだ子宮に血液が残っているので洗浄してもらった。
          
          順調に回復すれば、12月9日に2回目の処置をしてすべてを取り除くとのこと。成功する事を祈る。
          
           朝、今度からこぶの担当になるという新人看護師さんが、挨拶に来た。
          看護師「胞状奇胎の患者さん見るの初めてなんです。
          色々お話聞かせてください。o(^▽^ )o( ^▽^)o」とにっこりして根掘り葉掘り聞いてきた。
          
          ・初めての妊娠でなったのか。
          ・胞状奇胎の前兆はあったか。など
          熱心に、ただし笑顔で聞いてくる2人に
          こぶ「カルテ見て。・・・話したくないから・・・。ヾ(`0')却下!」
          看護師「話すと楽になりますよ。o(^∇^)o」
          こぶ「ごめんなさい。あなた達には話したくない。(#゚Д゚) プンスカ!」
          2人はムッとして「そうですか。(;¬д¬)」と出て行った。
          
          その後すぐに師長さんらしき人が、
          「あの2人にはもう来させないから、元気出して。
          \(・・ ) ヨシヨシ」と慰めてくれた。
          師長さんが帰った後も、こぶは悲しくて泣いていた。
          
          『色々知りたければ、本なりネットなりで調べればいいでしょ!
          それにお医者さんもいるんだし!
          患者に直接聞くのは、傷に塩を塗るような行為です!!
          (≧ヘ≦)』
          
           しゅうちゃんが毎日見舞いに来てくれる。
          食欲がないので色々と持って来てくれる。
          9日に2回目の掻爬手術をする事を言ったら、仕事を休んでまた来てくれると言う。ありがとうね。
          
          それと、退屈しているこぶに本を買ってきてくれた。
          「科学がますます身近になる本。」
          表紙を見て「何故この本なの?」と聞くと、しゅうちゃんは言いにくそうに「赤ちゃんの広告がない本を探していたらこの本が目にはいって・・。」だそうだ。
          読んでみたらすっかりはまって、退院する前に読み終わった。
          あと、エンヤ(ドリフじゃなくてEnya)のCDいいねー。
          聴いていて癒されます。
2003年12月6日(土) 『クラクラ』
 4日ぶりに看護師さんに髪を洗ってもらった。
          体も洗いたいんだけど、「頭だけ」だそうだ。
          シャンプー台で洗ってもらっただけなのに疲れた。
          シャンプー台を起こすときには、『立ちくらみ』というか座ったままなのにクラクラした。
          看護師さんに「体を洗うのはだめ!」と言われたわけが分かった。
          
2003年12月7日(日) 『やっとお風呂』
 やっと体を洗う許可が下りた。
          立ったままの状態で体を洗ったんだけど、途中で疲れてイスに座って洗った。
          
          『体力って落ちるの早いなぁ。』としみじみ思った。
2003年12月8日(月) 『主任さん』
 今日、初めて看護主任さんと話をした。
          主任さんの所のお嫁さんも胞状奇胎になって、2回掻爬したことがあるそうだ。
          幸いにもお嫁さんは術後の経過もよく、掻爬した7ヶ月後には妊娠の許可がおりて、その後出産したそうだ。
          主任さん「次は必ず生めるから。あきらめないで。」と励ましてくれた。
          
          『次は生めるのかなぁ。』









