2004年3月22日(月) 『おすし』
朝、しゅうちゃんを仕事に送り出した後、シャワーを浴びた、
髪の毛を洗っていたら、髪の毛がごそっと抜けた。
指の間に絡みついた髪の毛を見てびっくりした。
絡みついた髪を洗い流し、髪にふれると、
触った手のひらに髪の毛がびっしりとついた。
『脱毛が始まった・・。抜けるのは分かっていたけど悲しい・・。(´O`;;;) ハァー』
抜けた髪の毛を洗い流した後、髪を触るのが怖くて髪に直接シャワーをかけた。
シャワーのお湯が髪に当たると当たった箇所の髪が抜けて排水溝にたまっていく。
その髪を見て、声を出して泣いた。
『こんなに動揺しているこぶをしゅうちゃんが見たら悲しくなるだろうな・・。
1人で居る時でまだ良かった。ε-(´o`;)ホッ』
シャワーの後、髪の毛を乾かしてたら、さらにゴソっと抜けた。
と言うより、頭についてる髪の毛という部品が外れたような感じ。
抜けた髪を見てため息が出た。
今抜けても、治療が終わったら生えてくるのは解っている。
でもつらくて、納得できなくて・・・。
再び
『どうしてこう(胞状奇胎と抗がん剤治療なんかをする歯目に)なったんだ・・・。』という思いが沸いてくると同時に『そんな風に考える自分自身が惨めで情けない。』とも思う。
『泣いてもしょうがない。しっかりしなきゃ。』とは考えられない。
『こういう時って「ため息」しか出ないんだな・・・。しゅうちゃんが帰ってくるまでに気持ちを整理しなくちゃ。』と自分を奮い立たせた。
朝食は食べずに、サプリメントだけを飲んだ。
シャワーで疲れたから、お昼まで布団に横になり眠る。
昼食も食べたくないけど食べないとしゅうちゃんが心配するから、しゅうちゃんが作ってくれたおかず、ご飯、サプリメントを飲んだ。
何にもやる気がしない。
1人でただただ布団に横になってボーっとしていた。
夕方、帰ってきたしゅうちゃんに髪が抜けた事を話した。
しゅうちゃんは「何か食べたいのはない?」と聞いてきた。
『こぶが完全にはげる前に外食に連れて行ってくれるんだな・・。』と思い、
「おすしが食べたい。( ̄¬ ̄*) ジュル」と言うと、
「じゃあ、行くから準備して。」と言われ、お化粧をして出かけた。
食べ終わって家に帰る車の中で、
ふと、『こぶの場合は、9月ごろまで治療があるから、髪が生えて来るのは10月になる。それまで、ハゲたままになるから帽子を買いに行かなくちゃ。』と思った。
カツラについては考え中。
しゅうちゃんに話して楽になったからか、 おすしを食べて満足したからなのか、前向きに今の状況を考える事が出来た。
『こぶって単純。∠(^∇^)』
2004年3月23日(火)春分の日 『温 泉』
今日は髪が抜けない。
抜けないけど、髪の毛のつやがなくバサバサする。
『また、ごそっと抜けるんだ・・。(´O`;;;) ハァー』と思うと悲しくなった。
朝食にパン1個とサプリメントをたくさん飲んだ。
元気がなく意気消沈しているこぶを見ていたしゅうちゃんが、
「温泉に行こう。(*^・ェ・)ノ 」と言ってくれた。
こぶ「今から?」
しゅうちゃん「そう。準備していくよ。ヾ(゚∇゚)はやく」とこぶを温泉に連れて行ってくれることになった。
昼食におそばとサプリメント山盛りを食べてから出発した。
明日は朝からこぶを外来に連れて行くために、
しゅうちゃんは仕事を休みにしていたので、そのまま温泉に泊まることにした。
旅館に着いたのが18時頃で「今から夕食は準備出来ない。乂(゜ー゜)」
とフロントで言われ、外に食べに行った。
夕食に酢豚とサプリメントを飲んだ。
20時頃旅館に戻り、お風呂場に行くと、脱衣所が混んでいた。
抜けてきている髪を見られるのが嫌で『後で入ろう。』と思って、
お風呂場を出るとしゅうちゃんが居た。
こぶ「お風呂は?」
しゅうちゃん「混んでたから、後にする。」と言うから2人で部屋に戻った。
22時ごろお風呂場に行くと誰もいなかった。
誰もいないお風呂場で髪を洗った後、温泉のお湯に髪の毛を浸して、
『どうかこれ以上髪が抜けませんように。†ヽ(-。-;)アーメン』と祈りながら、注文しておいた育毛シャンプーでマッサージするように洗った。
久し振りの温泉で、リラックスする事が出来た。
『ハゲたら、温泉に行けなくなるから髪のあるうちに・・。』と思っていたから、連れてきてくれたしゅうちゃんに感謝です。
ここの旅館は24時間お風呂に入れるから、 寝る前にもお風呂に入って温泉に髪の毛を浸した。
2004年3月24日(水) 『今日から「がん」です』
朝6時頃起きて温泉に入る準備をした。
ふと枕を見ると、髪の毛がびっしり付いていた。
寝起きに抜けた髪を見るのは嫌な気分だ。
『寝ている間にこんなに抜けたんだ・・。(;゚⊿゚)ヽ えっ!』
快適なはずの朝風呂で髪を洗って、昨日より薄くなっている髪に不快感を表明したくなった。__( -"-)__不快だ
7時に朝食を摂り、サプリメントをたくさん飲んだ。
今日の外来は、タコ先生が診てくれる。
11時に予約がだから、それに間に合うように8時頃旅館を出発した。
ここから病院まで高速道路で2時間で行ける。
10時30分には病院に着いた。
採血部で採血をした後、産婦人科外来の待合室でタコ先生に呼ばれるのを待っていた。
キョロ(^_^;)(;^_^)キョロ
そう言えば以前、
温泉さん「午後は治療の患者さんがほとんどで妊婦さんは見かけないけど、午前中は妊婦さんが多いのよね。d(^-^) 」と言っていたことを思い出した・・。
こぶの前後左右斜めも全て妊婦さんに囲まれていた。
『産婦人科だから、妊婦さんがいるのは当然なんだけど、病気になって抗がん剤治療しているこぶは、ここに居たくない・・。早く呼んでくれないかな。ソワソワ(-o-)(-O-)ソワソワ』と思った。
20分くらい待っただけで、タコ先生が呼んでくれた。
タコ先生の診察室は一番奥の一番えらい先生の部屋で、初診の時に教授に診てもらった部屋だった。
『診察室に入りたくないな・・・。今日もなにか言われたら嫌だな・・。』と思ったけど、タコ先生に呼ばれたんだから入るしかない。
中では、今日の採血結果をタコ先生と一緒に見た。
タコ先生は上機嫌でこぶの採血結果を褒めた。
以前、タコ先生は「骨髄抑制で白血球が下がる。d(-_-)」と言っていた。
ところが、こぶの白血球は下がるどころか入院していた時より上がっていた。
白血球6400、血小板15万。全然問題なし。
タコ先生は「すごいね。」と驚いていた。
こぶ「サプリメント飲んで、副作用防止しているから。」と言うと
タコ先生「うーん。そうなのかなー。(。_゜) 」と不思議そうだった。
こぶは、『全然、不思議じゃないのにね。』と思った。
タコ先生が「今日はご主人来てないの?(゜へ゜)ところで」と言いにくそうにこぶに聞いてきた。
『もしかして、またいやな予感が当たった?・・。』と思いながら、
「送ってもらった後、本屋に・・。」と言うと、
タコ先生「そうか、1人で聞いて大丈夫?ヾ(^。^;)」
こぶ「何のことか分からないけどたぶん平気。( ゚◇゚)」と言うと、
タコ先生「こぶさんの病名が変わって、『臨床的絨毛がん』になった・・・d(-_-)」
こぶは意味が分からず、頭の中が『???(゚‐゚*)~゜ダレダレ?』だった。
何故、病名が変わったかと言うと、腫瘍ががん細胞と同じ動きをしているからで・・。
タコ先生「我々もおなかを開けて実際に見ていないから、はっきりと『がんです。』とは言えないんだけど、今までのデータとか、経験からして、これは胞状奇胎じゃないね。がんだね。ヽ(‐_‐
)」
こぶ「・・。」
『しゅうちゃんに何て言ったらいいのかな・・。また、悲しませてしまう。
子供を作っただけで、がんだなんて・・。llllll(;-_-)llllll ずーん』
その場で泣きはしなかったけど、言葉を失った。
『・・・・・・・・。』
その時、隣の診察室から泣き声が聞こえてきた。
『なんだなんだ?o(・_・= ・_・)o』
隣の診察室で診察しているのはこぶをB医大に紹介してくれた助教授。
助教授「あのねぇ、イヤだって泣いても貴方は子宮癌だから。」
泣いてる人のご主人らしき人「癌なんて信じられません!!(ノω・、) ウゥ・・」
助教授「貴方まで泣いてどうするの!!(*^-ェ-),ノ_彡
しっかりしなさい!!(*^-ェ-),ノ_彡
あなたが信じられなくても、奥さんは癌だから。」って、淡々と大声で話している。
泣いている奥さんらしき人「癌なんて信じられません!!」と嗚咽している・・。
が、助教授は気にすることなく「何度も言うようだけど貴方は癌なの!分かった?」と大声で話している。
こぶ『(*゚。゚)ぽか~ん・・。ひどい・・ひどすぎる・・。あんな言い方しなくても・・。(泣)』と思った。
タコ先生もこれには参ったようで、
助教授のブースに行って、御夫婦に挨拶してから
タコ先生「先生、声のトーンもう少し落として・・。」と、お願いしに行った。
戻ってきたタコ先生が「こぶさん、大丈夫?ヾ( ̄_ ̄;) 」
と声をかけてくれた。
こぶ「えっ?ああ、大丈夫。泣いたりしないから・・。(´ー`)┌」と力なくニッコリした。
タコ先生「折を見てがん検診をするから・・。d(-_-)」と言われ診察室を後にした。
診察室に入る時にした『嫌な予感。』が当った。
『勘がいいのも良し悪しだな。』
帰りの車の中で、しゅうちゃんに「こぶの病名変わったんだよ。臨床的絨毛がんだって・・。」
しゅうちゃん「何それ?どう言う意味?( ・▽・)エ?」
こぶ「先生達もおなか開けてないからはっきりと言えないらしいんだけど、がん細胞と同じ動きを腫瘍がしているから、がんなんだって。」
しゅうちゃん「はっきり言えないなら、気にする事無いよ・・。┐(´ー`;)┌フッ」とこぶを慰めてくれた。
『そのやさしさがつらい。こんなになっちゃって本当にごめんね。』と思った。
カーラジオから、槇原敬之の「どんなときも」が流れていた。
なんてグットタイミングな曲なんだ。
『どんなときも~どんなときも~僕が僕らしく在るために~♪』
聞いていて涙が出た。
『がんなんて・・。はげるし、怖い・怖い・怖い・怖い。((((;゚Д゚)))ガクガクブルブル 』
家に帰ってから、P社のサプリメントをじゃらじゃら飲んだ。
2004年3月27日(土) 『お花見』
よもぎさん
今日は天気が良いから布団を干した。
干しながら抜けて布団にくっついている髪の毛を、布団たたきでたたいて落とした。
抜けた髪の多さに悲しくなった。
『明日、看護師さんや患者さんに、変わり果てた頭を見られるのが嫌だな。会いたくないな。(*´o`)=зハァ-』
布団を干し終わってから、服を着替えて髪をとかした。
髪をとかしていたらブラシが何かに引っかかった。
ブラシにじゃなくて、『ブラシが』ひっかかったのだ。
『何だ??』
とブラシを見てみると、髪の毛が《綿あめ》のように『わさっ』とついていた。
しかも、切れた髪が襟足にたまって、ダマになって絡まっていた。
ブラシはダマになった髪に引っかかっていた・・ようだ。
ブラシについた髪を取っている間にも切れた髪がバサバサと落ちてくる。
思い切ってダマになっている髪の毛をつかんで取ってみた。
プチプチっと少し痛かったけど取れた。
ごっそりととれた髪の毛を見ていたら涙が溢れてきて声を出して泣いた。
その時電話が鳴った。『誰からだろう?』と思いながら電話に出るとよもぎさんからだった。
髪が抜けパニック状態のこぶは、
「よもぎさん、髪が、髪が、髪がー。
ジタバタ ヾ(≧∇≦)〃ヾ(≧∇≦)〃ジタバタ」と言うと、
よもぎさん「こぶさん、落ち着いて。ヾ(^o^;)p まあまあ」と、髪が抜けている時の対処方を教えてくれた。
よもぎさんと話をしていたら気持ちが楽になった。
冷静になって考えると、
『髪が抜ける事はさほどつらくない。胞状奇胎になって、赤ちゃんを産めなかった事に比べれば、『大した事ではないな。』そう思ったら、なんて事無くなった。
悲しむより、こんな経験滅多にないから、
『ハゲを楽しもう。└( ̄^ ̄)┘スッキリ』。
ただ、しゅうちゃんが帰って来たら驚くだろうな。
朝よりもハゲが進行しているから。
『悲しむかな?それとも、笑ってくれるかな?』と色々考えていた。
午後、帰って来たしゅうちゃんに、「ほら、こんなに抜けた。」と髪を見せると、
「うん。今日は天気がいいし、お弁当作るから、花見に行こうか。d(*^o^)」と誘ってくれた。
こぶも、『完璧にハゲる前に行くか。』と行く準備をした。
お弁当をしゅうちゃんが作って、近所の公園にお花見に行った。
何組かの家族がお弁当を広げてお花見をしていた。
こぶ達も、桜の木下に座り、お弁当を食べた。
辺りを見回すと、子供連れ(赤ちゃん)が多い。
赤ちゃんが楽しそうによちよちと歩いている姿を見ていたら、自然と涙が出てきた。
泣いているのが、しゅうちゃんにばれないように目線をそらした。
しゅうちゃんは泣いているのに気付いたと思うけど、何も言わずにただただ肩をそっと抱いてくれた。
『今頃、妊娠していたら7ヶ月"(ノ_・、)"シクシク』なんて、どうしようもない事まで考えてしまう。
お弁当を食べ、公園を散歩して家に帰った。
久しぶりに外出して疲れた。